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三十一文字の素描(2012.3/その4)

291.日に灼けた和室ふすまの切り傷は誰のものでも塞がらぬのさ

292.飛べぬなら翼は重いだけだろう傷ついた手で天までいくの

293.口の端から言葉ひとつを投げた途端すべてが錯乱するから唖です

294.同じ血を流せるように傷口を寄せ合い他人になりゆく校舎

295.かみさまとおなじ身体のよろこびを告げればあなたなぜ泣きたもう?

296.外見には儚いだろか四肢を焼き殺すことさえたやすい雪は

297.うつろなど知らぬうちのみ平静で知れば地獄のあだ花が咲く

298.無垢として救えることはないからさ寄り添われたいなら乞いなさい

299.宿場町歩けば廃墟のショウウィンドウ百年前の我が顔を見る

300.竹の花千代に八千代に青空に三三九度の稲穂降らせよ

301.鄙に戻り東京のそばで生きたこと平成の世のカインのしるし

302.記憶から薄れる地震・津波だが放射性物質は日ごと溜まりゆく

303.乳幼児つどう耳鼻科の待合いで放射能検査の貼り紙を読む

304.また春が訪れるまたわたくしを2011年の春に留めて

305.墓標だろう、生き続けても(被災者でなくとも)3.11は喚起する

306.平易なる言葉であろう 網目からこぼれ落ちゆく感性のため

307.何事も為せぬと思えば死は近し 言葉は防壁にして我が武器

308.異端だと示す指さえ届かない浮遊の末で笑ってやるわ

309.脊椎や乳房がちくちく痛むのは嘘を愛した罰なのでしょう?

310.針千本飲ます約束いつまでも身体をめぐり喉が破れる

インターネット広告の「トランスメディア」提供スキンアイコン # by hisui24k | 2012-04-21 17:58 | 短歌

三十一文字の素描(2012.3/その3)

271.絹繻子の蝶々が羽を休めてる匣の中身を知らずにいたい

272.ああ蝶々ついにおもねることもなく緞子の銀も剥がれゆくなり

273.身動きができなくなるの経文にメメントモリと重ねるたびに

274.僕は弁のない貯金箱 一度でも抱きしめられたら正しくあれたの?

275.薔薇病み衰えぬ風船のごと膨らむ棘に賛美を宿し

276.明日にも君を殺してしまうだろう 愛しているよ 愛しているよ

277.月光の静謐に似た瞳をひとつ「永遠」という名の硝子瓶へと

278.緞帳を蹴り飛ばしいま春が来る 嵐よ歌よ岩も砕けよ

279.少年期見上げる空は、あ、を、あ、を、と、堆積せし知識の轢死体

280.うつくしき二十の坂をころげ落ちぬわれら失楽のうるわしき日々

281.我が物にあらぬ香ぞムソルグスキーのプロムナードで埋まる寝台

282.図書室の棚の隅にはひっそりと読み継がれたるエドワード・ゴーリー

283.壊れてしまったものだけが永遠となりうる 彼岸、雪はあかるい

284.腫れ物にさわるみたいな優しさを身に付け僕ら大人になるの

285.臆病さを優しさと言い換える大人になんて価値あるものか

286.「いつから憎みはじめたの?」もうどうでも良いラジオのようなめいめいの夕餉

287.砕けた鏡を溶かした静脈は真夏に蒼くふきだすでしょう

288.さようならいつか遊んだ浜の駅海辺の町よ 累々瓦礫

289.「ああ、そこに住宅街があったよね」車窓から、島、岬、水平線。

290.階段をうろついている明け方の足音だけの猫も散りゆく

インターネット広告の「トランスメディア」提供スキンアイコン # by hisui24k | 2012-04-21 17:56 | 短歌

鑑賞なのか何なのか

既存の短歌から、物語を読み取るならどのようなものになるか、というコンセプトで二首。
詠まれた文脈を意識するのも、無視するのも、作品と相対する以上は自由だと思っています。

***

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インターネット広告の「トランスメディア」提供スキンアイコン # by hisui24k | 2012-03-22 19:09 | 短歌

三十一文字の素描(2012.3/その2)

0251.鞄には99%のカカオ潜ませ生きる 苦いほど良い

0252.毎食をチョコで済ませる少年に口を付ければ血の味がした

0253.体内の機能はほろべ自律さえ機械が担う時代のわれら

0254.嘘ばかり上手くなるのよ役割を演じなければ成り立たない国

0255.岬からいちばん遠い港へとシロツメクサの棺送ろう

0256.少年のはやる心は幕引きの後の超新星(スーパーノヴァ)想うほど

0257.脱原発論は日ごと高まりを見せカフェでもPDFスマホなら読めます

0258.弥生には身を寄せ合って眠ったでしょう 禍根は消えずとも生を祝って

0259.半身が愛の帰結の定義なら同じところに傷負えよ君

0260.更かす夜はまあたらしき傷のうずく足を組みつつ氷雨を恋うる

0261.新緑の名を持つ女を葬りて吾は一片の鉱物なりき

0262.肉体に規定されうる不自由から抜け出すためのジェンダー理論

0263.十三の誕生月の雪原で洗礼を受く 鏡のましろ

0264.末弟は居間に眠れる 断罪のことばはげにも明瞭である

0265.貴族にはあらぬ幻視の双生児 末の子のみが実学に生く

0266.罪悪だ、僕は罪人だと責めるたび陶然となる独り遊びよ

0267.朝焼けに我らが団地のシンボルは燦然と宿酔いの目を刺す

0268.真夏まで根雪の溶けぬ山の峰しんしん沁みる源流に、羊歯

0269.上靴の赤線ならば終わりまで鮮やかでした黙祷の朝

0270.パーカーのフードに咲かす向日葵が月を蝕む孤島の抱擁

インターネット広告の「トランスメディア」提供スキンアイコン # by hisui24k | 2012-03-21 20:36 | 短歌

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